映画

「変身人間シリーズ
美女と液体人間 1958年
「変身人間シリーズ」の1作目 ヒロイン白川由美に終始見とれる怪奇映画
ゴジラと同様の「第五福竜丸事件」をヒントに強い放射能を浴びた生物が別の液状の生物へ変異して
次々と人を襲うというミュータントを扱った特撮怪奇映画。
麻薬やギャングといった刑事物のドラマ展開の中に怪奇な殺人を入れることで身近な恐怖として演出している、
まぁまぁ小さな地域で人類揺るがす結構な大事件が起こっちゃって最後に全部燃やしたり
ちょっとエロいサービスカットがあったりとかゾンビ映画を随分先取りしてる感じがあって面白い。
ドラマや素材がウルトラQとかの方向の内容だが宇宙人や怪獣は出てこず何かしらの科学現象で人間が変身してしまう
という吸血鬼や狼男がやっていることを現代的なファンタジーに置き換える作品になっている。
白石由美の歌う姿とか佐藤允の爛々とした目がいい。

因みにゾンビ映画は1930年くらいから作られていてこの頃は魔導士的な人がゾンビパウダーを人間に振り掛けて
意のままに操るという呪術的操り人形だった、ロメロが「ナイト・オブ・リビングデッド」を作るのは1968年。


電送人間 1960年
変身人間シリーズ」2作目
終戦のどさくさに金を盗み隠そうとしていた一味に電送装置を開発していた博士と共に殺されかけた男が一味に復讐していくスリラー映画。
「物体電送装置」一緒に殺されかけた博士が研究していた物体を電波に変えて送受信する装置、電話を掛けるみたいな感じで受信側に同装置が
必要で行きたいとこに装置を先に送っとく必要があるとかハイテクなんだかローテクなんだか分からないちょっと面白い装置。
SFではわりとお馴染みで「ザ・フライ」の原作「ハエ男の恐怖」とかの装置と同じ、
時代が下ると電子世界へ行く「トロン」や「バーチャルウォーズ」、「スタートレック」シリーズのビーム転送装置など
形を変えて今でも使われる設定で日本だと変身ヒーローのスーツがミリ秒で転送されてくる。
映画では、男がこの装置を使い軽井沢⇔東京を行き来して復讐殺人を行う小道具になっている、ブラウン管受像機の走査線をヒントに制作された
電送の特撮描写や電送後の男の体が電波が乱れた時のように歪む描写が中丸忠雄の演技も手伝ってカッコいいやら怖いやら。

90年代くらいまで映画やTVのサスペンス劇場だったりの復讐劇のネタにされていた「戦後のどさくさ」や「復員」、
終戦直後の皆が落ち着かない時期に金や利権を得ようと何らかの悪さをした過程で誰かの恨みを買うというという内容で、
時代を下る毎に復讐される年齢が増し実子が代理殺人したり相続のゴタゴタの元ネタになったりきたところで
リアリティが無くなりこのネタは期限切れになって今ではほとんど見なくなった。

映画に出てくるキャバレー「DAIHONEI」が面白すぎた。

 

ガス人間第一号 1960年
「変身人間シリーズ」3作目
ヒロインに八千草薫を迎えた怪人との情愛物語 「液体」「電送」ときてガス人間。

東京で不可解な手口による銀行強盗が頻発していた、
警察は事件と同時期に羽振りの良くなった日本舞踊春日流の家元・藤千代を怪しんで強引に逮捕するが、
そこへ真犯人を名乗る青年・水野があらわれる。

ミステリーなどで「犯人は煙のように消えた」というような言い回しをするところを地で行ってる特撮映画、
ガス化するシーンとかガス状になって襲い掛かる所などは前回の「電送人間」での技術が生かされ更に進化してます。
ガス化の中間状態が物凄くカッコいい。
ただ主題はそこではなく怪人の水野と没落した家元・藤千代との情愛がテーマで、
終盤の八千草薫演じる藤千代の舞台進行とガス人間・水野と警察の立ち回りは当に息が詰まる感じで面白い。

特撮の娯楽だったり情愛をテーマにしたりしてますが、ガス人間・水野の独白は彼自身が現代社会の揶揄であることを
メタ的に表していてちょっと考えさせられる部分もあり反対に水野と藤千代のキャラクター性を強くしている所でもある。
ちょっと我儘そうにみえて悲壮感漂う絶妙なヒロインを演じてる八千草薫をずっと見ていたい、若い頃は中条あやみ張りです。

今作では前2作にあった大人の社交場「キャバレー」は出てこず酒を飲むシーンもバーでジョッキのビールをあおる、
新しく出てくるのが「喫茶店」でアイスコーヒーを飲むシーン、この頃はお酒を置かない「純喫茶」が出てきてた時期、
映画の内容も白昼堂々となので出てくる当時の風俗もちょっと違う。