映画

海底軍艦
押川 春浪のSF小説海底軍艦」シリーズを原作としてるが内容は全く関係ないものとなっている
1963年の特撮映画。
押川 春浪の原作小説は読んだことないが「電光艇」という潜水艦や空中戦艦といった
ロマン兵器の先駆けの小説らしい。1900年の明治時代のSF。

映画は太平洋戦争戦後20年、1200万年前に海底に没した伝説のムー帝国が攻めてきたという内容で、
元日本帝国海軍軍人が孤島で秘密裏に開発した万能潜水艦「轟天号」を巡る物語になっている、一方で、
公開も戦後20年弱ということもあり戦前生まれ・戦後生まれで成人のイデオロギーの違いが明確になる最初の時期で、
二十歳前後の若者・戦後20年を生きて来た戦前生まれの人と終戦直後から隔絶した孤島に隠れていた帝国海軍軍人
との考え方の違いと反発を描いていていたり結構社会派な一面もある。
最もそんなに簡単に「日本再起の為に!」と豪語する人を映画の時間で説得するのは不可能なので
生き別れた父娘という構図で「お父様なんて嫌い!嫌い!」いう感じに要約され、
「日本再起」と「世界の危機」を軸に、時代と隔絶し古い考えに固執したままのムー帝国の悲惨さを描き
グローバリズムを説く感じになっている。

轟天号までの下りが面白い、
旧日本海軍には建造済みの伊400型潜水艦が3隻あり400~402の船籍が振られ
戦中建造中の艦は404・405があり他にも3隻建造の計画があった、
終戦のおりに400~402は米軍に接収され相次いで標的艦などにされて沈めらている。
ここまでは史実として資料で残っているものでなんら不明な点も無い事実…
作家が目を付けたのが飛んでいる船籍「伊403」、建造計画では「第5234号艦」と
なっていて建造されれば「403」とつけらるはずだけど遅い施工開始日の「404」[405」が
先に建造開始されているところに目を付けた。
もし「伊403」が既に完成していて米軍の知るところではなければ…という感じ。
架空戦記物やSFでは馴染みのある現実とのリンクを計った設定で、
この映画では轟天号の艦長神宮寺大佐が日本から密かに脱出叛乱する為に使った潜水艦とされている。
ムー帝国人の侵略の手を潜りながら艦長と轟天号に迫る下りを現実とのリンクで高めて視聴者の
轟天号への期待感を高めている。

「恥ずかしながら 帰ってまいりました」
戦後太平洋の国々へ派兵された日本人は様々な事情で現地に残ったり帰還したりしていましたが中には、
横井正一さんや小野田寛郎さんのように終戦を知らずに28年あまり戦地のジャングルで人知れず生活していた人も居ます。
今じゃどやってもそんなこと無さそうな感じもしますが、神宮寺大佐のような人物もあながち嘘ではないんだなぁという感じ。
今も時々オッサンの口から飛び出す着席ギャグ「よっこいしょういち」とはこの人の事です。