映画

    トゥモロー・ウォー
2021年の映画 
COVID-19の流行で映画館公開を断念してAmazonに配給権が売却されネット配信で公開された映画。

エイリアンに侵略された30年後の未来から助けを求めるために兵士たちが現代にタイムスリップしてきた…、
彼らは私たちの未来に来て戦ってほしいと世界に発信した。

80年代の映画やキャラが渋滞してて散らかっていて支離滅裂とした内容。
話の大筋はドラゴンボールの「セル編」の逆でシンプルなはずなんだけど、
キャラクターをクローズアップしたいのに話の世界を広げ過ぎてて
「あーやっぱターミネーターって偉大やな、セル編って凄いね」
と思った。
キャラのセリフやその配置にも予定調和が丸見えで大丈夫かこれ?って心配になる感じ、
ただ最後にエイリアンのペットとシバキ合いしてんのは笑えた、それだけの映画だった。

パラレルワールドは「対岸の火事
本作のタイムスリップは「セル編」と同じくパラレルワールドで、
タイムマシンが実験的で決まった時間の往復しかできない送迎バスみたいなもらしい。
タイムパラドックスを生まない為に未来に大量に送り込まれる現代人は未来で戦っている人に影響を与えない人、
が選考基準になってるらしいが公に残る記録だけで判断しててそんな単純ものじゃないはなぁ…と思った。
それにもう未来から来ちゃってる事でパラドックス起こってるから「現代人には救えない」は確定事項で、
現在の人には「対岸の火事」になってるんだよね…。
「セル編」はトランクスはもう自身の世界は救えないと分かって未来から「人造人間」の事を
知らせに来ていてが、最後には超強くなって帰還することで自身の世界も救ってる、鳥山先生凄い。

でなぜかその「対岸の火事」が現代人に受け入れられて徴兵制になって何万人と送り込まれる事になってる不思議、
ジュールベルヌすら存在しない世界らしい。
もっと現実的に考えるなら、戦力の逐次投入をしてる時点でもう敗北が決まってるから
そんな戦争に参加しようってのがそもそも現在の思想とはマッチしてない古い考え方で
アメリカ政府はそんな考え方しないだろって思う。

タイムトラベルが減ってタイムリープが増えてる理由が分かったし、
なんかもう出がらし感が強いね。

映画

TENET
2020 クリストファー・ノーラン監督

コロナ時期なので配信待ちで視聴。
ループ物に近い感じだけど平行世界が同じ次元に存在し相互干渉しているために
順行者・逆行者がお互いの結果を見てお互いに助け合い、行動を誤れば死が訪れる感じになってる。
映画全体で主人公に対して前半が順行、後半が逆行になっていてループ物が何度も時間をやり直すのに対して
この映画は全体で1回しか過去に戻らず中盤からは視聴者が逆行者になり最初に戻る"順行"になってる、
ルールが分かれば見やすい映画。

逆行者は順行時間の中では物理現象が逆になって空気が吸えないとかなんかごちゃごちゃ言ってたが、
脚本的な意味は"マスク"程度しかなく視聴者的に見やすくするために逆行者では空気が吸えないので酸素マスクが必要と、
中盤から酸素マスク着けてる人の差別化を明示するような形になってる、
ただ終盤、赤:順行、青:逆行としちゃってるので設定に微妙なとこが見て取れたのが残念。

アクションヒーローもののド定番"予定調和"を逆手にとった映画。
弾丸に被弾せず、なんでかよく分からない超人的な精神力と体力でヒロイックな活躍を
"脚本"で行える主人公、脚本を主人公自身が書けば…という映画。
で、実はヒーローは名もない男の主人公だけではなく相棒のニールもヒーローであり
とても重要な役どころのバディ物要素も含まれている。

最後笑ったのが、散々奪い合ったアルゴリズムの見た目は超ダサかったことw。

映画

ゴールデン・リバー
2018 The Sisters Brothers


1851年ゴールドラッシュに沸くオレゴン州
殺し屋のシスター兄弟、兄イーライ弟チャーリーは、雇い主の提督の所有物を盗んだ探鉱者ウォームを追う。


西部劇、
賞金稼ぎとか殺し屋を主人公にしたものでは珍しく因果応報的なものが無く平穏な終わりで観心地は良かった。
ゴールドラッシュと絡めた内容でウォームの発見した謎の化学薬品を川に巻くと金が光って見える、
といった結構な奇想天外感があるが、これ自体はウォームの語る理想社会を視聴者や兄弟が
実現できる夢として受け止めやすくしてる装置かなと思った。
非現実的なんだけど金探しで身を持ち崩して疲れちゃった人が何万といた頃だしねそれをやっても詰まらないし、
こういう都市伝説めいたものがあってもいいかもね。

邦題が微妙、ゴールドラッシュと絡らめてるんだろうけど映画ではそれほど大きく扱っていなく、
ゴールドラッシュで急激に発展していくアメリカ社会の中で兄弟の心を移り変わりを追っていく内容、
原題もアメリカ映画ではありがちな題だけど的を得ていると思う。

イーロイがウォームを追う途中の雑貨屋で買う歯ブラシが絶妙に文明開化っぽさを出していて、
買うシーンと歯磨きの説明書を観ながら歯を磨くシーンが印象的だった、
それでいてその後も躊躇なく殺しをやってるのがあの時代の過渡期を表してるようだった。

映画

ひとごろし
1976 松田優作 丹波哲郎

江戸でスカウトされた武芸者・仁藤昂軒(丹波哲郎)は一流の武芸者だがその厳しい稽古やよそ者
という理由で藩士からは疎まれていた、ある夜酒に酔った帰り、仁藤は闇討ちしようと集まった藩士
返り討ちにして江戸へ逃亡してしまう、
藩士はかたき討ちを申し出るも、怒った藩主は上意討ちを決める。
藩士の双子六兵衛(松田優作)は武芸もダメ犬も嫌いな臆病者のだが妹の愚痴から上意討ちの討手を願い出る・・・。

時代劇だけど結構軽い内容、ロードムービー的な要素もある。
スラっとした長身の松田優作の縮こまった臆病者の演技と丹波哲郎の武芸者然とした振舞の対比がコミカルで面白い、
松田優作はカツラが全く似合わないが終盤に行くにつれて藩士双子六兵衛というキャラが板に付いて良くなる。

物騒なタイトルだけど、武芸では全く敵わないとわかっている六兵衛が仁藤に勝てると思い立った策、
仁藤が茶屋に入る宿に入る度に「ひとごろしぃ~」と叫んで休むのを妨害し精神的に疲弊させる作戦から来ている。
仁藤の言う負けない強さを身に着ける武士道とは真逆だが叫んで仁藤からひたすら逃げ回る情けない戦法は
意外と仁藤の武士道と同じというか実は負けない強さが負けたときにやるプライドを捨てた戦いが六兵衛のやってる事で、
最後、仁藤はこの戦法には勝てないと「降参」するのはこれが武士道の限界かなと思った。

中盤、別の藩内で「ひごろしぃ~」をやって藩士に連行されるも上意討ちであることを確かめられるも、
藩士のよけになお節介で仁藤と六兵衛は立ち合いをすることになるが、道中六兵衛と一緒に旅をすることになった
"およう"が、嫌がる六兵衛を無理やり立会場に連れていくシーンで居合わせてる藩士全員に向かって
「ひとごろしぃ~」と叫ぶシーンは武士社会に対してのアンチテーゼ、ひいては不条理な社会への批判かなと思った。
多分ここがこの映画のメッセージ性が一番強く出ているシーン。

映画

レプリカズ
2018年の映画 キアヌ・リーヴス アリス・イブ
オチは悪くないけどそこまでの道のりは耐えるのに苦労した。

こういった話につきものな命題「生命倫理とそれを弄んだ者たちの末路」がこの映画には無い。
それをあえて外していこうという意気込みは買いたいが、しないだけという耐え難い退屈な内容。
最初からロボットみたいな家族(マーベルのヴィジョンの家族かよと思った)には違和感しか無かった
ひょっとしてこれこの時は違う設定で撮ってたなのか?と疑いたくなる。

・それロボコップで観た。
・最初からロボットみたいな家族
ロリコンの協力者
・多すぎる家族(家族を犠牲と言ってるが子供3人もいる理由は埋め合わせに仕込み過ぎだから?)
・予定調和な雨
・案の定数が足りない
・どっち付かずで狂人になれない主人公と協力者
・丸投げ気質な主人公
・全員のキャラクターが定まっていない
・タイミングが最悪な予兆のない突然の告白(知らない間にスキップしたかな?)
・哀れな協力者←彼だけがただただ割を喰わされてるナゼ?
・なぜかWinWinで大団円
キアヌ・リーヴスがギフト!

観始めた映画は必ず最後まで!、どんな駄作にもいいとこがあるはず!
をモットーに映画を観ているが、この映画…良いとこを探してみたが無いね。

最後クローンの容器が足りなくてレプリカ出来なかった末娘を再生して終わるが、
子供を無しにして奥さんのアリス・イブの魅力で引っ張り、主人公もクローンになり
最後にクローンの奥さんとの間に子供が出来るって終わりで良くないかなと思った。
何よりモヤっとするのは、
主人公はなんの負債も負わずに家族を取り戻し丸く収まり、
研究の責任も自分のクローンに丸投げして放棄してるただのクズってところ。
視聴者は誰の立場に立って観ればいいんだろう?
面白い駄作は世の中に存在するがこれはその域にも達してない、残念だなぁ。

映画

地獄
1960年の日本の映画

観念的でありながら分かりやすい絶妙なとこを突いて来てると思う。
宗教それぞれの地獄の意味するところはよく分からないが、
この映画では死後あらゆる人々は等しく地獄に落ち、八大地獄の見合った責め苦に苦しんだ末に浄罪し転生する
といった救いの意味があるように思う。
怪奇映画と思い観ていたけど視聴後は穏やかな気持ちにさせられ観て良かった。

仏教的な観念の地獄を見せながら沼田曜一演じる田村はキリスト教他の悪魔になっているところも面白い。
何より沼田曜一の演技力に終始魅了された、最初に急に現れるシーンで田村の怪しい魅力にギュッと掴まれ、
中盤の養老院で人々の罪を暴き立てるシーンが凄い。

OPクレジットはワザとやってるんだろうね、
最初の女性の背中が良くて邪淫に落ちたこの映画の面白さはそういうとこ。

映画

T-34 レジェンド・オブ・ウォー

2019 ロシア映画
ロシア人は何本目だってくらいT-34を題材にした映画を撮ってる印象、
表題がいつも「T-34」なので制作年代が分かりにくい。

1941年WW2独ソ戦
調理設備を前線へ運ぶ補給トラックを指揮する新米士官イブシュキン少佐は、
運搬中に敵ドイツ軍Ⅲ号戦車に遭遇し反撃の手段が無いトラックで見事に敵の攻撃を回避する。
前線に到着したイブシュキンはそのまま1両しか残存していない戦車部隊の車長に任命され、
続く戦闘で4両のⅢ号戦車を撃破するもドイツ軍の捕虜になってしまう。

前に観たT-34 開発者のミハエル・コーシュキンを主役にした「T-34 ナチスが恐れた最強戦車」は
ハイリコフからモスクワまでの800㎞を無整備で走破したという逸話を元に結構なファンタジー
盛り込んでエンタメに振った作品になっている、がロシアの題名は「T-34」・・・めっちゃわかりにくい。

この映画は、過去に制作された「鬼戦車T-34」と類似するところも多いらしいが
視聴した感じプロットは「勝利への脱出」に似ている、
「勝利への脱出」はWW2でドイツ軍の捕虜になった連合国兵士がドイツ軍率いる
精鋭のサッカーチームと対戦を隠れ蓑に脱走計画を実行するという内容。
この映画では独ソ戦で捕虜になったロシア人で編成されたT-34とドイツ軍新兵の
演習から脱走るという内容に置き変っていて、名勝負をしたドイツ軍士官に対しいて
友情とも取れる敬意を示してる所は「眼下の敵」なども思わせる。

まさにファンタジー
なにかこうロシア人に対してシンパシーを感じてしかたない、
草原を走るT-34
清純な女子を乗せたT-34
清楚な女子の水浴び(背景にT-34)
といったアニメで鉄板のメカと美少女で有りがちなことをロシア人は実写でやってくる、
「T-34 ナチスが恐れた最強戦車」もそうだしこの映画でもそうだった…
水浴びは逆にハズされて爆笑したけど。
戦闘シーンは昨今のビデオゲームで実装されているキルカメラ的な演出を取り入れ
市街戦を臨場感あふれるリアルな演出でとても楽しめたが、何より気に入ったのが、

敵陣馳のバス停で演習場から脱走したT-34を待つ同志女性

っていう押井守に助言を求めたかのようなこの上ないファンタジックな演出、
女性がバス停に立った瞬間一緒にときめいた。
最後の演出も中々のものでスッキリした気分になれる映画。